知らない間にJim Jonesのラップがうまくなっている

知らない間にJim Jonesのラップがうまくなっている

あなたはDipsetに、そしてJim Jonesにどのような印象をお持ちだろうか?90年代初期~中期にヒップホップと出会った管理人が彼に対して抱くのは、派手で、どこか軽くて、そしてコマーシャルなイメージだ。サウンド的にも、オーセンティックなNYサウンドではなく、サウスっぽい感じ(彼らはハーレム出身)。事実、インタビューなどでも度々サウスのサウンドからの影響を公言している。
当時、NYのラッパー達は、自分たちがNYのMCであることに対して強烈な自負を持っていて、ニューヨークサウンドこそが絶対のような価値観を持っていた。そんな価値観の中でサウス好きを公言し、その影響を隠そうともしない彼らの存在は、NYサウンドはかくあるべし!のような価値観を持っていた私の目(耳)には邪道に感じられた。自分の方が年下の癖に、若者の行動を嘆く高齢者よろしく、こういう奴らがヒップホップをダメにするんだとさえ感じた。
しかし、同時に思ったのは、この人たちは商売上手だなということだ。彼らの立ち振る舞いからはビジネスの香り、金の香りがプンプンした。

そのイメージはそっくりそのままJim Jones自身のイメージとも重なった。ビジネスに長けている。お金に対する嗅覚というか、えげつない手を使っても、金になりそうなチャンスは逃さないというBirdmanや50centなどとも共通するようなハスラー気質。
また、目立ちたがりと自己主張の強さはハーレムの人間のメンタリティーなのか。基本的に気のいい奴だけどおそろしく目立ちたがり屋でめんどくさい奴、そんなイメージも彼にはあった。なにしろ暇さえあれば誰かにビーフを仕掛けている。インターネットが普及し、SNS等で発信するのが容易な時代になると、さらにそのイメージは加速した。常に誰かをおちょくっている。札束を見せびらかしている。そして、それさえも注目を集めることを意図した(おそらく)計算ずくな振る舞いであるところがやはりやり手だ。

つまり、何が言いたいかというと、派手で自己演出に長け、優れたビジネスセンスを有すも、ラップは下手くそ。
これが長らくJim Jonesに対して抱いていたイメージだった。実際、昔のインタビューで、「俺は、ラップは上手くないけどビジネスはうまいから」的な趣旨の発言をしていたのを読んだ記憶がある。

ここまでが、前置き。

久しぶりに何気なく、The Diplomats の『Sauce Boyz 』のPVを観た私は面食らう。

歳を重ねた彼らが醸し出す渋くオトナな佇まいも驚きだが、一番意表を突かれたのは先陣を切る彼のラップだ。

(あれ?ジム・ジョーンズってこんなにラップうまかったっけ?)

聴いていただくとお分かりかと思うが、この曲で、一番タイトな「聴かせる」ヴァースを披露しているのはジムだ。
多くのヘッズが同じことを感じているようで、近年に発表された彼のPVのコメント欄を覗くとたいてい、
「この人こんなにラップうまかったっけ?」、「ジム・ジョーンズのラップを初めてうまいと思った」といった、この記事のタイトル同様の驚きと感動の入り混じった声であふれている。
ビジネスマンとしてだけではなく、ラッパーとしても人知れず成長を遂げていたのだ。
Fat Joeとコラボした『NYC』でも、一昔前ならフロウ巧者のジョーに食われてただろうこの組み合わせも、今じゃどうだろう。どちらかといえば、曲全体をリードしているのはジムの方という印象を受けないだろうか。

精力的にクオリティーの高い楽曲を発表し、すっかりNYヒップホップを名実ともに背負う頼もしい存在になっていたのだ。なんだか非常に感慨深い。

※この記事の下書きを書いたのは2019年かその辺り。投稿しないまま時が流れ2023年、Jimはますます精力的に良曲をドロップし続けている。また改めて特集してみたい。

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